pub:2015.8.20/upd:2016.7.18

【要約】NHK 100分de名著 : パスカル「パンセ」

「人間は考える葦である」のタネ本

パンセは哲学者ブレーズ・パスカル(Blaise Pascal)の著作ある。
彼の磨きぬかれた合理的で冷徹な視点から、人間の弱さを鋭く、的確にえぐりだす。

パスカルの思想に共感できる部分が多かったので要約を残しておく。

パンセの基本情報

表題パンセはフランス語のpensee(考えられたもの)からきている。

パンセは神の存在証明のための著作の準備として随想として、924の断章を集めたもの。
しかし、著作としてしてまとめられることはなくパスカルは世を去っている。

パスカルは自然科学の世界でも天才として知られており、パスカルの定理、パスカルの原理、ヘクトパスカルと、現代科学でも多くの分野に名を残している。

第1回 人生は選択の連続だ!

仕事の選択について

職業の選択を題材にして「選択肢がありすぎることについての苦悩」について考察する。

断章97

一生のうちでいちばん大事なのは、どんな職業を選ぶか? これに尽きる。ところが、それは偶然によって左右される。習慣が、石工を、兵士を、屋根ふき職人をつくるのだ。
含意
  • (職業の)選択肢は無数にあるが、人間に選択の権利はない。偶然(神)がそのように決定する
  • 決定は偶然が行い、習慣が人を職人にする
  • 習慣とは広い意味で環境である

断章138

人は、屋根ふき職人だろうとなんだろうと、生まれつきあらゆる職業に向いている。向いていないのは、部屋の中にじっとしていることだけだ。
含意
  • 習慣が人を職人にするための要件として、ただ「忙しさ」があればよい
  • 職業の向き不向きなど存在しない

断章129

我々の本性は、運動のうちにある。完全な静止は、死である。
含意
  • 人間が選択可能であるのは、偶然による決定の中で動き回るか、死を選ぶかの2つに1つである

断章109

私たちがどんな状態にいても、自然は私たちを不幸にするものである。私たちの願望が、幸福な状態というものを、私たちの心に描き出してみせるからだ。
含意
  • 自然(神)の作為に背いて、欲望を持つことが不幸の原因である
  • 欲望を持つことは人間の本能である

第2回 もっと誰かにほめられたい!

「ほめられたい」という本能を題材にして、自己愛について考察する。

断章100

世間での地位が上がるにしたがって、人は真実から遠ざけられてゆくものである。例えば、ある王様がヨーロッパ中の笑いものになっているのに、当の王様は、そのことを全然知らないというようなことがしばしば起こる。真実を伝えることは、たいていは伝える人にとって不利に働くようだ。真実ゆえに、憎まれることになるからだ。
含意
  • 真実は”必ず”人を傷つける
  • 地位が上の人を傷つけることで社会生活に不利が生じる
  • 人は自己愛ゆえに真実に傷つく

断章100

人を叱らなければならない立場の人が示してしまう、誤った心遣いというものがある。相手を傷つけまいと回り道をしたり、手心を加えたりして、いろいろと気を使わなければならないからだ。ところが、あれこれ手をつくしても叱責というこの苦い薬は、相手の自己愛にとって、苦いということに変わりはない。そしてたいていは、薬をくれた人に対してひそかな恨みをいだくようになるのだ。
含意
  • 真実は”必ず”人を傷つける
  • 真実を伝えて、地位が下の人を傷つけることも、社会生活において不利に働く
  • 人は自己愛ゆえに真実に傷つく

断章100

自己愛の本質とは、自分しか愛さず、自分しか尊敬しないことだ。しかし、次のような場合、人はどうして良いかわからなくなる。愛してやまない自分が実は欠点だらけで、悲惨のどん底にあるのになす術がない場合である。このような困惑の中に置かれると、人間の中に最も不正で罪深い情念が芽生えてくる。自分の欠点を、誰の目にも触れないよう、覆い隠すよう全力を尽くすのだ。
含意
  • 欠点をさらけ出すことができない原因は自己愛にある
  • 自らの欠点は自己愛を揺るがす

断章150

虚栄は人間のこころに非常に深くいかりをおろしている。兵士も、料理人も、誰もがみな、それぞれに自慢ばかりして、賛嘆者を欲しがるのだ。哲学者だって同じだ。そうした人たちへ批判を書く人だって、的確だとほめられたいのだ。批判を読んだ者も、読んだという誉れがほしい。これを書いた私ですら、そうした願望を持っているだろう。そして、これを読む人だって。
含意
  • 承認欲求は普遍的な人間の欲求である
  • あらゆる行動の根源となる力は自己愛である
  • 個人が人々から尊敬されるように行動することで、人間が進化し、社会が成立する

第3回 生きるのがつらいのはなぜか?

人生のつらさを題材として、人間の尊厳について考察する。

断章139

数カ月前に一人息子に先立たれ、そのうえ訴訟や争いごとでうちひしがれて、さっきまで悩んでいたあの男が、いまは不幸のことなど考えていないのはなぜか? 驚くことは全くない。男は、犬が6時間前から狩り出そうとしてるイノシシが、どこに現れるかと今か今かと待ち受けているからだ。たかがそれだけのことでそれ以上はいらないのだ。人間というものはどれほど悲しみでいっぱいでも、気晴らしになることに引きこまれたら、その間は幸せになれるのだ。
含意
  • 人生は気晴しにすぎない
  • 幸せは気晴しの内にある

断章139

私は、人間の不幸はたったひとつのことから来ているという事実を発見した。人は、部屋の中にジッとしたままでいられないということだ。会話や賭けごとなどの気晴しにふけるのも、ただ自宅にジッとしていなれないからにすぎないのだ。
含意
  • 人間は暇を不幸として認識する
  • 人間は不幸に耐えられない

断章139

私たちの不幸の原因を発見したあとで、更に一歩踏み込んで考察をめぐらし、理由を発見しようとつとめたところ、説得力がある答えを見出した。それは私たちの宿命、すなわち弱く死を運命づけられた人間に固有の不幸なのだ。それは、慰めとなるものがまったくないほどに惨めな状態なのである。
含意
  • 人間は暇があると死について考えてしまう
  • 死について考えないために人間は気晴しにつとめる

断章146

人間というものはどう見ても考えるために作られている。考える事こそ人間の尊厳のすべてなのだ。人間の価値のすべて、その義務のすべては、正しく考えることにある。
含意
  • メタな思考を入れ子にして繰り返すことで、いつまでも結論を出さずに考え続けることで、人間ならではの尊厳を保つことができる。

第4回 人間は考える葦である

「人間は考える葦である」という視点からパスカルの思想を総括する。

断章77

私はデカルトを許せない。彼はその全哲学の中で、できることなら神なしですませたいと思っただろう。
含意
  • 「因果律でも完全な答えを出せない」という世界認識を持つべきである。あくまで考え続けることが人間の尊厳である

断章347

人間は一本の芦にすぎない。自然の中で最も弱いもののひとつである。しかし、それは考える葦なのだ。人間を押しつぶすためには、全宇宙が武装する必要はない。一滴の水ですら人間を殺すにたりる。しかし、たとえ宇宙が人間を押しつぶしたとしても、人間は宇宙より気高いと言える。なぜなら、人間は自分が死ぬことを、宇宙の方が自分よりはるかに優位であることを知っているからだ。宇宙はこうしたことを何も知らない。だから、私たちの尊厳は、すべてこれ、考えることの中にある。私たちは、考えるというところから立ち上がらなければならないのだ。故によく考えるように努力しよう。ここに道徳の真理があるのだ。
含意
  • 人間はごく弱い存在である
  • 考えることが人間の存在意義であり尊厳である

REFERENCE

Leave a Reply

Your email address will not be published.